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大丈夫?瞳が薔薇色だよ

初期土沖、高校教師×大学生。


「げ」
「どーしましたか」

 今日の昼食はミネストローネ。トマト色した鍋の中をぐるぐる掻き混ぜながら、土方さんに声をかける。

「一緒に風呂入らねぇ?」

 何とも突拍子のない提案だ。

「別にいいですけど。どうしたんです?」

 土方さんが持ってきたのはガスと水道の引き落とし明細書。
 先月より随分、上がってる。

 スープ皿によそって、テーブルへ。
 春前、二人暮らしのルームに昼時のいい香り。
 二人、イタダキマスを唱えて食べ始める。

「でもホテルじゃないから狭いですよ?」
「一人が洗ってるときは一人が沈む。それでいこう」

 頷きながら頷く。我ながら上出来。
 相手も文句のないところを見るときっとおいしくできた。

 風がふわりと、網戸を越えて室内に入ってきた。
 沈丁花の香りをかぐと思い出す。
 一年前の卒業式。あのときも今日みたいにいい天気だった。
 卒業証書をクラスで一人ずつ、受け取っているとき。何故か私は飛ばされて、最後の最後だった。

『卒業おめでとう。そして。結婚して下さい』
「……ふふ」
「どーした」

 左薬指に光るそれと一緒に渡された卒業証書。
 そのあと国語教諭であり担任だった土方先生は、教室中をパニックに陥れ、職員室の卒業式を無事済ませて肩の荷を下ろしていた先生方の目玉を飛び出させた。ああいい思い出。

「思い出し笑い」
「きゃーおっきーのえっちー」
「どこの親父ですか全く」

 それからあたしたちは結婚はまだ早いからお付き合いから始めることになった。土方さんちに同居することは婚前の練習みたいなもの。
 卒業したから先生と生徒じゃないんだって。
 よく口が利けたものだと思う。

「食べ終わったら買い物行きましょう」
「いいけど。何買うんだ?」
「入浴剤」

 あなたと一緒の香りを纏うため。
 今夜を楽しむため。

 ゴチソウサマと呪文を唱える。




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