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キス、温めますか

初期土沖。クリスマス。

 玄関の戸を引く。

「ぶっ」

 あーはっはっはっはっはっ、豪快に笑うは俺の部下たち。上司の近藤さんは大声では笑いはしないものの、うん似合うぞと笑顔だった。
 顔を赤らめるなというほうが無理というものだろう。もちろん照れではなく怒りで。

「よくお似合いですよ」

 すいっとお揃いの赤い服に身を包んだひとりが俺に歩み寄る。
 曲ってる、と俺の白い付け髭を直す様を見て、また笑いが起こった。曰く、「似合ってる」。そりゃそうだ、黒髪のお前たちに白髭は似合うまい。自分の銀髪を褒め称えたくなった。が、その中には永倉もいてイラッとした。
 まあまあと宥める目の前の女に目を向ける。
 女だから髭はないのは当然のこと、でもぼんぼりが先端についた赤い帽子、そこから漏れる砂色の髪は、外人のようでよく似合ってる。そして赤い上着、赤いスカート、黒いブーツ。俺はひっそり眉根を寄せる。

「……短い」
「はい?」
「スカート」

 ああ。と沖田君が笑った。くるりとその場で回る。ミニスカートはひだがない分、ふわりと広がることはなかったが、その白い腿を見せ付けられて俺はバカヤロウと肩を掴んだ。

「なぁんですか」
「誰だこんなデザインしたの!」
「とっつぁんプロデュースですよ?」
「アンチクショォォォ!!」

 この場にいない上司の上司に叫ぶ。嫁入り前の娘になんてカッコさせてんだ。しかも真冬の寒空の下!

「みんなノリノリなのに」

 ねぇ? と後ろを振り返って同意を求める一番隊隊長に、皆が皆頷いた。その視線はきらきら眩しい腿に吸い寄せられている。見んな。切腹命じるぞオラ。

「大体、何で強化警備にこんな衣装?」
「攘夷さんもアハハと笑って気を緩めるからって近藤さん言ってたじゃないですか」
「そうだけど。そうだけど!」

 お子さんも喜ぶ、その親も喜ぶ。よって真選組イメージアップに繋がる。
 というのはいいとして、何も全員着なくてもいいんじゃないだろうか。
 俺は本物は絶対差していないだろう刀の柄をそっと撫でる。

「よし、トシも着替え終わったことだし、各自担当地区へ向かってくれ!」

 近藤さんが手を叩き、隊士たちがぞろぞろ動き出す。ある者は徒歩で、ある者はバイクで、ある者はパトカーで。
 俺は車だ。運転手は隣の沖田君。
 運転席へ乗り込む女の腿に、後部座席からひざ掛けをかける。紫苑色が俺を映して、おかしそうに「ありがとうございます」と呟いた。
 はあと溜息を吐く。

「陰気臭ーい」

 エンジンをかけ、ハンドルを握ろうとした細い腕を取る。
 突然のことに紫苑色が砂色の睫毛にぱちぱち隠れるのを見るか見ないか、俺はその唇をふさいだ。ちょっと冷たかった。

「誰が口臭いだと」
「……そんなこと誰が言いましたか」

 やがて滑り出した車の中、窓に映りこんだサンタ衣装の自分が変に堂に入ってて、俺は自重気味に口端を上げた。




Title:>stock>06
BGM:HIMEKA『果てなき道』
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