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今知りたいのは、人間が嘘吐きになる平均年齢

金魂、土神。
後朝。

 起きていることはわかっていた。ただ、何か話したい気分じゃないから背中を向け続けているのだろうと容易に知ることが出来たから、私は私で勝手に動いていた。
 湯上りの頬は数十分前に拝んだときより赤らんでいる。そこへポーチから取り出した化粧水だけつけて、簡易な鍵を解除する。安いラブホではなくきちんとしたビジネスホテルの一室。スウィートではないが底辺でもない、中の上の部屋は、視覚的に大分歩きやすくなっていた。朝が来たのだ。生物が動き出す、本来の時間が始まろうとしている。

「shenyue」

 『中国系』という噂だけで私の名前をチャイナ読みした男に視線を送る。
 店とは違う、よくいえば真面目な、普通にいえば無愛想な顔が、ベッドに腰掛けた高さで私を見ていた。東側の薄めのカーテンが漏らす朝日に揺れる金髪に、少々寝癖がついていておかしかった。
 雫が一滴肩に落ちる。「本名じゃないわヨ」と髪を拭きながら返せば、フンと鼻息だけが返って来る。

「あなたと同じ」
「源氏名ってか」
「似たようなものネ」

 私は客を取らないから源氏名というよりは、ただの偽名といったほうが正しいだろう。
 夜はトシーニョと名乗る、通称トシがベッドから立ち上がった。行き先はさっきまで私が使っていたバスルーム。

「シャワーちょっと熱いかも?」
「ふぅん」
「寝起きは熱いほうが目が覚めるから」

 視線を合わせることなく擦れ違う、その瞬間にするりと男が向きを変えた。
 香水はつけていない。備え付けのシャンプーかボディーソープか、清潔感第一の慣れない香りが、動いた空気に乗って私の鼻腔をくすぐった。

「何かわかったか?」
「……何が?」
「何が知りたい?」
「おもしろい子」

 くつくつ喉の奥で笑ってやる。本心からの笑いだったのがわかったのだろう、髪を掻き分けられ、うなじに噛み付かれる。昨晩の客相手の振る舞いとは随分違う。腹が立ったら普段の客にもこんな乱暴をしているのだろうか、短気な子どもだと余計おかしくなって笑ってやったら、きつく吸う。
 ピピッ、ピピッ、ピピッ。
 寝る前にセットしておいたらしい、後ろの彼のケータイが電子音を鳴らす。スヌーズモードだったら雰囲気ぶち壊しねと、頬にシーツの感触と腕に乱暴な男の肌の感触を感じながら、薄く吐息を漏らした。




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BGM:Salyu『TERMINAL』
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加島恵梨(カシマメグリ)
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