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いつか終わる日まで

初期土方。
「鬼」の副長。完結。
人よ、残酷な人よ、』,『お前は無力だと神が嗤った』,『「まぁ、そういうことだ」(簡単に言ってくれる)』,『明日を上手に生きるには』の続き。

 気を緩めすぎだとは思っている。
 そもそも女にバレたのも自らの油断が招いた失態だった。そこからどうもガタガタとバレ続けている。
 それでも、嫌だったが嫌じゃなかった。捨てる気になればこんなところすぐに捨て置けるからだ。職業柄、突然“殉死”してもなんらおかしくない。組織的にはまずいかもしれないが、鬼の長い目で見れば大したことには分類されない。だからあまり慌ててはいなかった。これ以上バレるのはよろしくないとは思っているが。

「おはよう、トシ」

 異種族の襲来、山への侵略、文明の急激な変化。同族内の喧騒、目を血走らせた坊主、ひとりの侍。鎖と言霊の呪縛、解放されたときの呼吸の仕方、差し伸べられた手の温かさ。すべて昨日のことのようだ。
 生まれたのを見る、ちょっと目を離して再び目線を向けたとき、そこに既に人はいない。そんな人間の寿命の短さには慣れている。比べてしまえばそんなにも差のある人生。
 だからこそ、恩を返すときはその人間が死ぬまで返し続けようと思っていた。そして思っている。

「土方さん、おはようございます」

 楽しいことは好きだった。
 そう、人間は嫌いじゃない。見ていて馬鹿だとは思うが、突拍子もないことをしてくれるから。認められないものを抹消しようとするが、自らを投げ出してまで救おうともしてくれるから。
 この真選組だって、副長という座だって、窮屈さも感じるが楽しいのだ。
 刀が好きだ。スタイリッシュで心躍る。考えるのが好きだ。指示し駒が動くのはスッとする。
 人間より単純にできているらしい脳細胞。楽しみ、おもしろがることを喜ぶ。それの何がいけないというのだろう。
 楽しいことは好きだった。だから人間が好きだ。

「おはようございます、副長」

 めいめい違うことを心に思い描きながら、常と変わらない笑顔を向けてくる人間たち。
 角が疼く。牙が疼く。爪が疼く。血が、疼く。
 別れを哀しみ、寂しがることを忘れたわけではない。ただ、感じるのは人間の目から見ては少々鈍いかもしれないけども。

 白い光が目を焦がした。

「おはよう」

 何度目かわからぬ、日が昇る。




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BGM:KOKIA『調和 oto』
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