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お題を使って綴ります
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うまくできている。鬼だ鬼だと騒いでも、そんなの何を今更と笑われるに留まってしまう。「鬼の副長」とは誰が言い出したのか気になった。 「ふーん、皮肉なもんですねェ。まあまあ、飲みなさいって」 「……何だかなァ……」 入室厳禁、とでかくぶっとく書いておいたから訪ねる人はいないだろう。近藤さんの部屋、あたしは溜息を吐く土方さんへ鬼嫁を傾ける。鬼に鬼嫁という酒も洒落ていると思うのだが、永倉は趣味が悪いとぼやいた。銀髪の中からは金色に光を弾く角が二本覗いていて、あたしを上機嫌にさせる。 どうしてこんなところで人間のふりをしているのか。聞けば、住んでいた山が天人に開発されてしまったらしい。そこからいろいろあって、近藤さんに拾われたとかなんとか。人間社会で銀の髪は目立つには目立つが、天人が闊歩しているこの江戸じゃそう騒がれずに済んでしまうと。天人に追い出された鬼は天人によって生かされている。これを皮肉といわずに何という。 「で、他は。何が訊きてェの」 「んー。そりゃ訊きたいことなんてたくさんありますよォ、ねえ永倉」 「はあ、まあ……」 生真面目に酒には手をつけず烏龍茶をちみちみ飲んでいる永倉は、正座を崩さず落ち着かない。せっかく秘密を共有する者同士、杯を交わして今後の対策を考えているというのに。あたしも自分用に徳利を傾けて透明な水を注ぐ。舌に爽やかな刺激。おいし。 「この角以外に鬼の証みたいなのってないんですかー」 「オラ、引っ張ンな、抜けたらどうする」 「抜けるんですか!?」 「どうするかって話だ」 「牙とか爪とかとんがってるイメージありますけどー」 「聞け、このヤロウ」 にぎにぎと撫でるあたしにいい顔をしない土方さんは、永倉にツッコミを受けながら猪口を空にした。その口を覗いても牙は人間のままに見えるし、猪口を持つ手の先、爪も切りそろえられた丸いまま。何で角だけ器用に出せるのか、逆にあたしとしては不思議なことだった。 「そりゃ尖るよ、牙も爪も」 「見せて!」 「無理。今テンション低いから」 簡単に却下される。ぺいっと振った手の指は五本。 鬼は知恵と慈愛がない、その分のふたつを欠いて指は三本だと聞いたことがある、とあたしとふたりきりのとき永倉は言っていた。じゃあテンションが高くなれば指も数が減るのだろうか、聞こうと思ったがあたしの知る土方さんは知恵も慈愛も持っていたから聞かずにおく。知識だけでは副長はやっていけない、愛することを知らなければあたしみたいなバカにつきあってくれない。そういうことだ。 「あの……本当に、スパイとかじゃないんですよね?」 「違うっつの。疑いたくなる気持ちもわかるけどよ」 「妖怪だろうが天人だろうが、スパイだとしたらあたしたちとっくに死んでるでしょ」 真理だろう事実を突けば永倉は嫌そうな顔をした。人というのはこのくらい疑い深くなければいけないのかもしれない。あたしみたいに楽しんでばかりの人間は、隊長向きじゃないとつくづく思う。 「この髪って地毛ですよね」 「ああ」 「じゃあ、」 「白鬼」 赤鬼、青鬼みたく色の名前はあるのかと、問う前に土方という名を名乗る鬼が答えた。聞き慣れないと笑うと、そんなもんだと肩を竦め、永倉から酒を注いでもらう。 「っていうかお前ら……」 「あ、お帰りなさい近藤さん」 「失礼してます」 訪問者に一同が顔を上げる。入室厳禁といっても主の帰宅は例外だ。土方さんは角をあたしにまるで操縦レバーのごとく握られながら遅ェよと呟く。今後の対策を考えるといっても結局はメンバー限定の飲み会だ。突然の呼び出しにメンツが欠けても、会合を延期する気はさらさらなかった。 「近藤さんはとんがった牙とか爪とか見たことありますかー」 「あるよ」 「えぇーずるいー」 外の風を纏った近藤さんにつっかかるあたしは、結構酔ってきているかもしれない。 また出してあげてンのかトシ、近藤さんの苦笑が、この鬼はあたしたちのために角を出してくれているのだと告げていて、ますますあたしを上機嫌にさせた。 目を輝かせないで日々を過ごせなんて、むごいことを仰ると一蹴したくなるぐらい。 coaxial:『いつか終わる日まで』 Title:>stock>06 BGM:KOKIA『Follow the Nightingale』 PR | カレンダー
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