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透明な夜に相応しい祈り

高速エイジ、雨丸とサム×優菜。
夏企画用に書いていたら長くなりすぎたのでこっちに。

 月が浮かび始めた夜だった。

「先輩!」

 視界に入った後ろ姿ふたつに声をかける。本日の勤務はデスクワーク。残業なしに終わって自室の帰路だった。
 気付いて振り向いた先輩たちの顔が、オレを見てふっと綻んだ。

「雨丸」
「お出掛けですか?」
「ああ、サムが映画のチケットを手に入れてくれてな」
「わ、スゴイ! これよく取れましたね!」

 話題作も話題作、見せてもらったチケットに興奮するオレに、引き止められたに関わらずにこにこと頷く二人の服装が、見慣れないものだとふと気付く。
 制服ではなくオシャレな、誰が見ても外行きの格好。
 あー……、と。二人で歩く意味がわかって居心地が悪くなる。オレってば超・邪魔者じゃないか。

「すまない、今日は遠慮してくれ、二人分しかないんでな。そのまま泊まって来るし、一人で夜道は危険だ」
「こ、こども扱いしないで下さいよ」

 言ってから気付いた。
 泊まって来るって。
 ボンッと頭が音を立てた。こういうことに免疫がない自分が恨めしい。でもサラリと結構ヘビーな内容告げられてるよね、オレ。あれ、この年齢ならこんな話題普通なんだろうか。子ども扱いされてないってことなんだろうか、あれれ。

「ボードにも書いて伝えてはいるけど、もし誰かが探していたら教えておいてくれ」
「は、はいッ!」

 じゃあ、と優菜先輩がオレに手を振り別れを告げる。自然な動作でサム先輩の手が優菜先輩の背中に回され、二人の先輩は夜の街へと繰り出していった。

(映画観て外泊か……)

 そういえば明日、二人は非番だったかもしれない。羨むのもバカらしくなるぐらい理想のプランだ。とても野暮なことをしてしまった感でいっぱいになる。

「さーめまるっ?」
「ぐえ!」

 とぼとぼぐったり歩いていると、勢い良く後ろから飛びつかれた。

「は、んちょー……
「何か疲れてんな、どうした? 先行くとか言って何でまだこんなところにいるんだ?」
「えーっと、話すと長くなりまして……って程長くもないんですが、ついさっき優菜先輩とサム先輩に会いまして……
「ああ、あの二人か。早く終わって良かったよ、外泊するって言ってたからな」
「ぎゃー!!」

 夜の端を齧っただけで混乱しているオレに、班長は何でもないように受け流す。
 破廉恥です班長、未成年とゆーか十代前半が口にしていい現実ではありません。
 心底わからないと、体全部使って表現する班長に小突かれながら、オレたちは月が完全に浮かんだ夜の道を歩く。

 どうぞ、素晴らしき休日を。




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BGM:うたたP『ストラトスフィア』,『アド・アストラ』
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加島恵梨(カシマメグリ)
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