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あたためていた卵の落下

初期土方と沖田。
初期世界に万事屋はあったと思いますか。

 わざとらしく音を立てながらこちらに向かってくる一対の足音に苛立ちを隠せない。
 さーて今日は、どんな面倒事を拵えたか。

「土方さん事件です、」
「そりゃ大変だな」
「永倉が家出しました」
「……」

 大方、締め切りが目前にいるのに報告書作成テンプレートがトんだとか、締め切りが通り過ぎたのに手許には報告書がまだあるとか、そんなレベルかと思っていたのに、どうしたものか。
 それなりに事件ですねコノヤロー。

「……心当たりは」
「もう、あり過ぎて」
「そっぽ向くなこっち向け」

 ふうと目を細めて口許に弧を描かす、困った笑顔を作るこいつの神経はきっと、どこかで間違った接続方法をしているに違いない。
 だから永倉いじめは程ほどにしろとあれほど。

「もう見廻りの時間なのに、部屋すっからかんなんです。詰め所にもいないしブーツも氏繁もないし」
「マジでか」
「マジです」
「……てめー、ホント何してくれちゃってンの」
「あたしのせいだって決め付けないで下さい。鳴らしてもここにありますから無意味ですよ」

 リダイヤルで選択した番号は決定されることなく画面から消えた。
 この分だとマジらしい。今日はエイプリルフールじゃねーし、ケータイは確かにそこにある。
 どっかに出掛けてつい遅くなってる、だけなら電話の一本入れるだろうし、ケータイがなければ公衆電話という手もあるし何より、勤務より私用を優先させるような性格などあいつはしていない。どっかの誰かさんとは違って。

 何が原因かは知らねーが、とりあえず、誰かがどこかであいつを怒らせた。
 ああいうタイプが意地を張ると一番面倒なのは、人生経験からいって俺はよく知っている。そのキレるスイッチは傍から見るとどうでもいいようなことだから性質が悪い。

「……原田呼べ」
「あいあいさー」

 一番はこいつ、二番はトリアタマ、そして三番は間違っても俺じゃない。行き先を教える程の仲となると結構限られてくる。任務なら二番隊に何か伝えてるとは思うが、こいつのことだ、その辺はきっと確認済み。恐らく原田も捜索に狩り出されているだろうが、とにかく思春期の考えることの手掛かりなんて、多いほうがいいに決まってる。俺はもう思春期なんて思い出せない。

「やっぱり、プリン食べちゃったのがいけなかったのかなァ……」

 思考が止まった。

「名前、蓋に書いてあったんですよね……」
「……」
「なのに気付くことなく開けちゃって……」
「……」
「食べ終わっても気付かないままそのままポイ……」
「……」
「気付いたのはたった今……」
「……」
「ねェ、どう思います、土方さん……」

 そ、と置かれたプラスチックケース。
 見覚えのあるそれは、俺がおやつに食べたカスタードプリン。の、残骸。アラ本当、しんぱちってマジックで書いてある。

「……。」
「居ましたァァァ!」

 雨続きで気分が滅入って冷蔵庫開けたら目の前にひとつだけ鎮座していてそれで、メーカーや賞味期限なんて確認せずそのままぺりっと蓋を。

「…………。」
「おー、ごくろー。どこにいたー?」
「たった今電話が入りまして、その、今日は帰りたくないそうです。勤務は副長が請け負うはずだと言っていたと伝えられました」
「ん? 誰に?」
「えっと、よろず」
「車出せ」

 隊士の言葉を皆まで聞かずして俺は、唯一の心当たりの自称何でも屋に赴くため部屋を出た。

「私用にパトカー使う気ですか」
「……」
「たしかに一ダースは重いかもしれませんけど、手で持って足で運んでこそでしょ」
「……傘持つの手伝え」
「えっらそー」

 出動命令は取り消して、俺は私用で一番隊隊長を引き連れて屯所をあとにする。

 付いて来るんだから味方になると思っちゃいけない。
 二番隊隊長奪還は、一番隊隊長が誰に味方するかに、かかっていた。




Title:>stock>03
BGM:愛内里菜『TRIP』
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