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出会いがあった。別れがあった。私はまだ、此処にいる。

初期土沖。
春のうつけ。

 眠るとき、上掛け一枚がいるかいらないか少し迷うようになった。
 とろとろとまどろんでいると、ばさっと向こうで音が立つ。

「春は嫌いだ」

 春もうららかな陽気になんと物騒な。
 あたしはひっくり返って副長を見る。想像通り不機嫌そうだった。

「……花粉が飛ぶから?」
「違ェ。や、それもあるけど」

 くっつくには結構しんどくなってきた。暑くはないけどあったかい。
 のべりと背中にぶら下がって、この副長殿に一時休戦を強いたデスクワークの顔を見てみる。変質者出没。太くでっかく、強調しているMS明朝体が読めた。

「莫迦が増える」
「ははあ、成る程」

 ぽよんぽよんぽよん、ふわふわの髪をスプリングさせると土方さんはがあっと唸った。

「お前、ンっと、腹立てさせる天才な!」
「アハハ」
「笑うな!」

 バカだから丸まってるんじゃねェ、カッカして土方さんは詫びを要請し、あたしは右から左へ聞き流す。楽しい人。

「春はお嫌いですか」
「今さっき言ったじゃんよ」
「あたしは嫌いじゃないですよ」

 春も。
 夏も秋も冬も。

 おもしろくなさそーに土方さんは舌打ちして、前言撤回。区切って、莫迦は嫌いだと訂正した。やっぱり、楽しい人。

「何で春に増えるんだろうな……」
「浮かれちゃってるんですねー」
「何に」
「春に」

 縮こまっていた冬から飛び出せる喜びに、人々は踊ってしまうんじゃないかと。言えば土方さんはそんなもんかねと嘆息する。

「雪も解けますねー」
「……もうなくね?」

 土に還る雪もまた風情があってよろしいこと。

 春は別れの季節。
 あの人やあの人やあの人。笑顔で別れた人もいれば、挨拶も交わさず別れた人もいた。
 でも、それに続く出逢いもまた楽しみ。
 あったかい春だ。

 背中から降りて、あたしは畳にごろりと横になる。

 また逢える日を楽しみに。
 出逢いのときまで、眠りましょう。




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