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アン・ドゥ・トロワで恋に落ちよう

初期土沖。
初めましてを懐古。

 特に意味もなく、静かな夜に最初を思い出す。

『外人?』
『老人?』

 こんなやりとりが最初だっただろうか。え、なんかヤだな。もっと素敵な思い出を思い出して俺。
 でもこのやりとりをしたのも事実だ。第一声だったかどうかは別にして。

 なにしろ天人が歩くようになったとはいえ、江戸の人間にしては珍しい、そして江戸じゃなくても日本の人間の目には珍しく映る、綺麗な、綺麗な、青い瞳と砂色の髪。違う国から密かにやってきたのかと若い俺は真面目に思ったんだ。天人かと思わなかったのは、今考えても不思議。
 それが素で、生まれつきだと知って、ああ仲間かと思った俺に、こいつは同情はいらぬと一瞥くれてその場を去った。気がする。

 夜だから砂色はあまり光沢を帯びていない。
 特別変異、といわれるらしいこの髪色を持つ俺だから、こいつの気持ちはよくわかる。全部わかるわけじゃなくても、何を言われどう見られて来たのか、周りの雰囲気はわかる。
 だからこそ拠り所になれればいいと、バカなことを俺は考えてしまうのだった。

 老人呼ばわりされたこの白い髪。光沢があるんだから銀色だと言い張っているが、やはり目立つのはよくわかっている。両親とも黒髪だったと記憶する、何で俺だけこんな色。子ども時代は思い出したくない、というか、肩書きと黒服手に入れた今になってようやく軽口を叩けるようになったなんて、一体どこの誰が信じよう。それ程に外見は人生において重要なのだ。

 そっと柔らかい唇にキスをする。
 数時間前までこれでもかといわんばかりに吸っていたのにまだ足りない。さすがに舌は入れないが唇を唇で啄ばんで、感触を脳に伝えていく。

 外見だけを見て判断する輩を叩きのめすために嗜む暴力じゃなくて、まっすぐ立つために嗜む戦術であって欲しい。

 髪と同じ色の睫毛が震える。
 その青い蒼い目が夜越しに俺を映したら、そうだね、「好きだよ」と告白してみよう。




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