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嗚呼、麗しの愚者よ!

初期な永倉と沖田。
文明の利器。

 局長が呼んでいる。
 ただしそれはおれのことじゃなくて、沖田さんのこと。
 何でも先日あの人は、小さな迷子を家まで送り届けたらしく、その親御さんがお礼に来ているらしい。
 ちゃんと仕事していたんだなァなんて感心してる場合じゃない、もっと仕事していることアピールすればいいのにと妬いてる場合じゃない、何しろご夫人を待たせているのだ。アポなしに来るなとかそんなの関係ない、何しろここは公共の場。笑顔で要求を突きつけてくる一般市民、こういうのが嫌であまり仕事をしたことをアピールしないんだとしたらなんて計算高いんだろうと思う。

 程なくしてケータイが点滅した。鳴る前に開いて受信ボックスをこじ開ける。

『了解。』

 もうちょっと主語述語をいれてくれないかしら。
 どこにいるのか、どのくらいで着くのか再度問う。向こうの客間では近藤さんがご夫人と談笑している。そっと襖の隙間から覗く隊士に混ざればきっと、子連れの見合いもどきが見えるんだろう。何でもいいから早く帰って来て。
 ひとりいったりきたりしていると新しくメールを受信する、またも飛びつくが如く必死に確認する。

『機種変した。メーカー変えたから厳しい。』

 ああ、道理で妙なタイムラグがあると思った。納得しながらも思うのは、しかし使い勝手が悪いのはメーカーを替えたせいだけじゃないだろうなということ。正直あれは骨董品レベルだよと、昨日まで見ていたシルバーを思い出す。
 何時に帰ってくるのか聞くのは諦めた。要は、ここから一番近い機種変できる店舗を出たところだということも含んでいるのだ、 この文面は。
 帰ったら見せて下さいねと打っていると、ぴよよよ、新たにメールを受信した。

「……。」

 ずばっ、畳が声をあげた。

「ちょ、どした新八!?」
「お前が物投げるなんて何事!?」
「やってられっかコンチクショー」
「ヒィィィ局長ォォォ!!」
「ぱちがキレたァァァ!!」 

 ああそうでしたそういえばそうでした。姿を見ないのはあなただけじゃなかったんでした。
 受信したメールの添付ファイル、新品のケータイの姿。
 先月出たばっかりのスリムなフォルムに一瞬見惚れて気付いたのは、アレこれどうやって撮ったんだろうってこと。自分で自分を撮ることなんて出来るはずもない。
 首を傾げて改めて読んだ本文。
 概要を瞬時に理解して思わずイラッときて投げつけても、ちょっと仕方ないんじゃない?

 転げた畳から拾い上げて原田さんが目にしているのは、おれがさっきまで見ていた、深い海の色をした文明の利器と、たった二文字+句点。

『土方。』 

 撮影してもらって送ってもらってそれをおれに転送。コンチクショーご親切にどうもありがとうございますさっさと帰って来てください。




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